衆議院総選挙4日目。本日は、社民党選挙公約の「2.格差・貧困の解消」について説明したい。

2021年 衆議院総選挙公約

選挙公約の項目2「格差・貧困の解消」は、長期にわたる新自由主義的政策によって拡大した格差と、貧困の問題に対する社民党の処方箋を示している。この記事ではまず、「最低時給を全国一律で1500円に」という政策提言について取り上げたい。

1999年の労働者派遣法改正により派遣労働が原則自由化されて以後、労働者全体に占める非正規労働者の割合は増加の一途をたどってきた。今や全労働者の4割以上が非正規雇用、女性については5割以上が非正規雇用、というのが、今の日本の労働現場の状況だ。企業にとっては、非正規労働を増加させる目的は人件費の減少であり、これは労働者にとっては賃金の減少に他ならない。昨日、記した「実質賃金の持続的な低下」も、まさにこの「非正規労働者比率の増大」が原因となって引き起こされている。

このような、労働者にとって不利益な状況が続く労働市場は、なんとしても変えていかなくてはならない。そのためには、これ以上の非正規労働の拡大に歯止めをかけ、非正規労働者の正規労働への転換を進めていく必要がある。労働者・市民のためにたたかう政党として社民党は、「雇用の原則は、期間の定めのない直接雇用であるべきだ」と考える。それが「労働分配率」を引き上げ、家計の可処分所得を増やして消費を拡大させ、経済を再活性化させる「ボトムアップの経済政策」の一手段だ。

労働者全体の所得を増大させるために社民党が主張する政策提言は、非正規労働の正規化だけではない。より直接に、労働者の得る賃金レベルを底上げしていく必要がある。その手段として社民党は、現在、地域によって異なる最低時給を「全国一律、1500円」に引き上げる政策を提言している。

この政策に対して、良く聞かれる反論は「日本の中小企業には、時給1500円を保証するだけの体力がない」ということだ。これに対してはもちろん、中小企業が時給1500円を実現できるようにするための財政的支援策を、政治の力でしっかりとやっていくことが必要だ。この背景には、(立場の強い)大企業が大きな利益を得るために(立場の弱い)下請け・孫請けの中小企業の利益が小さくなっている、という日本の根本的な、構造的な問題がある。

最低時給1500円は「高い」と感じる人もいるかもしれないが、1日8時間、年間250日働いて、年収はやっと300万円。十分とは言えないが、なんとか暮らしていける最低限の賃金だろう。今の最低時給ではそれさえ得られないからこそ、現実には若い労働者の間で「ダブルワーク・トリプルワーク」しないと生活ができない、という声が上がることになる。社民党は「1日8時間働けば、まともに暮らせる社会」をめざしている。

最後に、この政策の「全国一律」という点についてふれたい。ご存じのように、日本では地域によって最低時給が異なる。ILO加盟国の中では、日本のように地域によって最低時給が異なる国は少数派(数%)で、ほとんどの国は全国一律(産業ごとに違う場合もあるが)の最低時給を定めている。容易に想像できることだと思うが、このことは、特に「若年労働者の首都圏・都市圏への流出」を招き(同じ働くなら収入の高い土地の方が良いから)、地方経済の弱体化、その結果ますます地方の企業が高い賃金を払う力がなくなり、最低時給の地域格差が広がり、。。。という「悪循環」を招く。

長年、問題となってきた「地方の衰退・首都圏・大都会への人口集中」の原因の一つは、この最低時給の地方格差にもあるのだ。「同一労働・同一賃金」の原則からも、日本のどこに住んでいても同じレベルの賃金が得られるようにしていくべきだが、「全国一律の最低時給」という政策は、このような日本が抱える構造的な社会問題を解決する方策でもある。

(2021.10.22)