衆議院総選挙7日目。本日は、社民党選挙公約の「4.ジェンダー平等と多様性社会の実現」について説明したい。この項目で考えるべき課題は多岐にわたるので、本日はまず、「ジェンダー平等社会の実現」という政策目標について考える。


「ジェンダー平等社会の実現」は、平和・福祉(共生社会)と共に、社民党の基本理念の大きな柱の一つだ。「世界経済フォーラム」が毎年、行っている「ジェンダー・ギャップ指数(男女平等の達成度を測る指標)」で、2021年は対象となる156ヵ国中、日本は120位。もちろんOECD諸国中では最下位である。

ジェンダー・ギャップ指数は政治・経済・教育・健康の4つの分野での男女平等度指数を総合したもので、日本は教育・健康の分野では良いのだが、政治・経済の分野で劣っており(特に政治分野は147位)、それが全体の順位を大きく下げている。

特に問題が大きいのは政治の分野だと、社民党は考える。ジェンダー・ギャップ指数を計算する上で比較対象となっている下院(日本では衆議院)の議員数の男女比は、日本では9.9%と、1割にも満たないのが現状だ。社会の半分は女性なのに、その社会の在り方を決める力を持つ、国会などをはじめとする意思決定機関で女性の代表が1割もいない、というのは、大変に不自然なことではないだろうか。

男性ばかりの議会では、そこで議論される政策だけでなく、そもそもどのような課題に取り組むのか、という問題意識自体が「男性中心」のまま、変わっていかないことにもなるだろう。そのような、「変われない」社会は発展せず、衰退していくばかりではないだろうか。

それに対して、議会での女性比率が高まれば、より多様な問題意識が生まれ、そこで取り組む課題そのものが変わってくるし、解決のためのアイデアも、これまでの男性中心の考え方から大きく変わってくるだろう。その結果、社会がより多くの人々にとって、もっと良い方向に変わってくるのではないだろうか。(だから社民党は、新しいポスターで「変わるって楽しい!変わらないなんて、もったいない!」と呼び掛けている。)

この議員数の男女間のアンバランスを是正するために、多くの国で採用されているのが「クオータ(割り当て)制」だ。社民党はジェンダー平等を実現するためには、クオータ制の導入が不可欠だ、と考える。

クオータ制については「一方の性を優遇するのは逆差別ではないか」といった反論があるが、現実に構造的な男女の不平等が存在する場合、目標とする平等状態を実現するためにはさまざまな困難な課題があり、平等状態を自然に実現することは不可能に近い。したがって、一定の平等状態が実現するまでは、より割合の少ない側の性を優遇する、という政策には合理性があり、国連の「女性差別撤廃条約」でも、構造的な不平等状態を解消するために積極的にクオータ制を導入することが推奨されている。

もう一つ、日本の場合、政治分野への女性の進出を妨げている要因には、選挙制度そのものの問題もある。小選挙区制のもとでは、複数の候補者を立てるわけにはいかないので、その地域のいわゆる「有力者(男性であることが多い)」が候補者として優先され、女性候補が立候補するチャンスが少なくなる、と考えられる。

2018年に「政治分野における男女共同参画推進法」が成立したが、罰則のない「理念法」であることもあり、その後に行われた参院選では、女性候補者比率が50%を超えたのは社民党と共産党だけで、自民党は10%台、公明党は10%以下という状況であった。これではせっかく法律を作っても、女性議員を増加させることには結びつかない、と言わざるを得ない。

この問題を抜本的に解決するには、小選挙区制をやめて、「完全比例代表制」に近い選挙制度に変えていくことが望まれる。ノルウェーなど、北欧諸国の多くが比例代表制の選挙制度を採用しており、それらの国での女性議員比率は国際比較でも常にトップクラスだ。これらの国では、比例代表制を採用した上で、「候補者名簿」を男女交互に並べる、といった細かい工夫をして、女性議員比率を向上させている。

社民党は「ジェンダー平等社会の実現」という政策目標にかけては、日本の全政党の中でトップを走ってきた、と自負している。唯一の女性党首をいただく政党であり、また全国連合の常任幹事会の構成も完全に男女同数とし、内部からジェンダー平等を実現していく努力を続けている。

「ジェンダー平等社会の実現」は、女性のためだけではない。男性のみなさんは、「男性中心社会」は男性にとっても息苦しいものだ、と感じることはないだろうか。私たちは、「女性が生きやすい社会は、男性にとっても生きやすい」と考える。女性であるか男性であるかに関わらず、すべての人が生き生きと自らの人生を実現していける、それが「ジェンダー平等社会」だと思う。

(2021.10.25)