衆議院総選挙最終日。この「社民党神奈川のブログ」からの最後の発信として、本日は「民主主義」という本質的な問題について、考えてみたい。

今回の選挙にはさまざまな争点があるが、現政権を退陣に追い込み、政権交代をめざす理由として、現政権は「民主主義を壊す政権」であり、今の日本の政治状況がもはや「民主主義」と呼ぶに値しない、ひどい状態になっているからだ、ということがある。

その意味で、今回の選挙は日本に「民主主義」を取り戻すための、重要なチャンスだ。言い換えれば、「民主主義を無視し、壊していく政治勢力」に引き続き政権をまかせるのか、それとも「民主主義を立て直し、確立していく政治勢力」に政権をゆだねるのか、を決める選挙だ。

世界にはさまざまな政治システムを取っている国があるが、「最善ではないかもしれないが、現在、考え得る最良の統治システム、それが民主主義だ」というのが、日本を含めて多くの(民主主義国家と呼ばれる)国の共通の認識だろう。「国民に主権があり、国民の意思に基づいて政治の方向性が決まっていく」民主主義の理念については、我々は共通の認識を持つことができる。

先日、紹介したフランシス・フクヤマは、民主主義の理念が正しいと思われるにも関わらず、民主主義の政治がうまくいかない国があるのは、その国の制度に問題があるのだ、という。民主主義を担保するためには、とりわけ「法の支配」が貫徹しているかどうか、また「説明責任を果たす統治機構」になっているかどうか、ということが重要だ。

「法の支配」という概念は、権力を法(一般の法律ではなく、基本法、憲法)で縛ることによって市民の権利や自由を保護することを目的とする「立憲主義」の原理であり、いわゆる「法治主義」とは異なる概念である。社民党をはじめとする「立憲野党」と呼ばれる政党はすべて、この「法の支配」が正しい政治の重要な要素である、と認識している。

「説明責任(アカウンタビリティ)」という言葉は、特に説明するまでもないほど広く認識されている言葉だと思うが、政治の分野においては、主権を有する国民から統治を付託された政権には、その実施する政策の必要性、具体的な実現手段、費用などを国民に説明し、またその結果について、詳細に説明する責任がある、ということだ。実施した政策に何か問題があった場合にも、その失敗の理由をきちんと検証して、国民に説明する責任が政権にはあるのだ。

現在の自公政権は上記の二つの重要な民主主義制度の要素を満たしておらず、故に即刻、退陣してもらい、政権を交代することこそ、日本に民主主義を取り戻す最善の道だ、と社民党は考える。

およそ9年間にわたって続いてきた安倍・菅政権は、この「民主主義の破壊」において、戦後最悪の政権だった。安倍政権は、「法の支配(憲法による制約)」から逃れ、多くの憲法違反の法律を数の力で強行採決してきた。黒川元検事総長の定年延長問題では、特別法である検察庁法の規定を無視して、一般法である国家公務員法の定年延長規定を根拠に定年の延長を行った。これは「特別法は一般法に優先する」という法の大原則を無視した、前代未聞の暴挙であった。

さらに、三権分立という日本の民主主義システムの根幹に関わる大原則も無視し、司法を内閣に従わせるために検察庁法を改悪しようとしたが、これは多くの市民の反対・抗議によって改悪を防ぐことができた。権力が民主主義を破壊するのを見逃してはならないということ、そして市民が声をあげれば、このような権力の策動をストップさせることもできる、ということを我々は経験した。

安倍政権を継承した菅政権も、政権発足直後に「学術会議新会員の任命拒否」という法律無視(学術会議法違反)・憲法破壊(学問の自由の侵害)の暴挙に出た。学術会議の会員選定にあたっては、学術会議の推薦に基づく会員リストによって首相が任命する手続きになっているが、首相による任命は形式的なものにすぎず、学術会議が推薦した通りに任命する、というのがこれまでの政府の方針であり、現在の任命手続きが確立された当時の中曽根元首相も、そのように国会で答弁している。

学術会議の推薦した新会員の中で、特定の6名の任命を拒否した理由については、いまだに政府は説明しようとしていないが、拒否の対象となった6名はいずれも秘密保護法など、日本を再び戦争のできる国にしたい政府が進めてきた「戦時立法」に反対した学者たちであり、拒否の理由は明らかだろう。政府の方針に反対する学者には、学術会議会員という重要な地位にはつかせない、という政府の意思の表れであり、これは当事者となった学者たちのキャリアにも影響を及ぼしかねない、権力の暴挙だ。これは、まさに憲法で保障された「学問の自由」の侵害に他ならない。

安倍・菅政権では権力者たちの縁者や利権を共有するものたちによる「政治の私物化」も大きな問題となった。森友学園、加計学園の問題、桜を見る会などの問題が起こるたびに安倍元首相は「国民に丁寧に説明する」と何度も繰り返したが、一度たりとも国民が納得する説明はなされなかった。その後を継いだ菅元首相は、それ以上に「説明しない」首相であった。結果的に、それが国民から大きな不信感を抱かれることとなり、「これでは選挙に勝てない」ということで退陣に追い込まれた。

その後、ご存じの通り、新型コロナ感染の急速な拡大を受けて、7月16日に野党が臨時国会の開催を要求したにもかかわらず、国会の開催を拒否しつづけ、自民党内の内輪の争いにすぎない総裁選に2週間もの日程を費やし、新たな首相が選ばれたのに、やっと開かれた臨時国会で十分な議論をするために野党が要求した予算委員会さえ開かず、とにかく「ボロが出ないうちに選挙をやってしまおう」というもくろみで、当初11月7日が有力視されていた選挙日程を前倒しするという前代未聞の挙に出て、この総選挙に突入した、というのが現在の状況だ。

さまざまな問題を縷々述べてきたが、これらすべてが示すのは、現政権がやっていることが「民主主義」の名に値せず、私たち市民・労働者のための政治ではなく、一部の人(権力者に近しい人、大企業、富裕層)の利益を追求することしか考えていない政治だった、ということだ。そして、問題が起こってもそれを国民に説明すらしない、「無責任」な政治だ、ということだ。

民主主義のシステムにおいては、国民の付託に応じた政策を実現しない、あるいは実現する能力がない政権ならば、選挙によって交代させる、というのが当然のルールだ。これまで、我々が経験してきた日本の政治のさまざまな問題点を解決し、真に私たち市民・労働者の利益となる政治を作り上げていくためには、政権交代しかない。社民党は「生存のための政権交代」をめざして、最後までたたかっていく。社民党への、皆様の絶大なるご支援を、どうかよろしくお願いします。

(2021.10.30)