昨年12月16日の安保3文書(国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画)改定の閣議決定後、日本の軍事大国化への歩みが着々と進められている。タレントのタモリさんがTVの番組で「今年は新しい戦前になるのではないか」という発言をされたのは、そのような時代の危険な空気を的確に感じ取られているからだろう。

私たちはもちろん、そんなことを決して許してはならない。5月3日の憲法記念日、社民党は新社会党との共同宣言「新しい戦前にさせない!平和力の結集へ」を発表した。

社会民主党・新社会党共同宣言「新しい戦前にさせない!平和力の結集へ」

最近では、米国のTime誌が岸田首相へのインタビュー記事で「岸田首相は数十年の平和主義を捨て、自国を真の軍事大国にすることを望む」とのタイトルをつけ、日本政府がそれに抗議する、という顛末があったが、現実に岸田政権が進めている政策を見るならば、むしろ的を射たタイトルではないだろうか。5年間で43兆円、GDP2%への防衛費増額を本当に実現するならば、日本は米国・中国に次ぐ世界第3位の軍事予算を持つ国になってしまうのだから。

国会では「防衛産業強化法案」が5月9日、衆議院を通過した。日本の防衛産業の強化は、安保3文書にも記載されている政策の一つだ。社民党は5月10日、これに抗議する談話を発表した。

【談話】防衛産業基盤強化法案の衆議院本会議可決に抗議する

この法案の内容で驚かされることは、「防衛装備品(武器)」の製造施設などの国有化までを視野に入れていることだ。

防衛産業強化法案が衆院通過 与党と立民、維新など賛成 「究極の軍事企業支援策」と共産、れいわも反対

2014年に武器輸出三原則が撤廃されて「防衛装備品移転三原則」となり、輸出の条件が緩和されたが、それでも日本の防衛産業の場合、製造した製品(武器)の販売先は自衛隊が主であるため、事業継続が難しく撤退する企業も多いと言われている。上記の「国有化」はそれを救済するのが目的と思われるが、そこまでして防衛産業を強化することが、本当に日本が進むべき道なのか。

また、防衛産業の販路を拡大するために、すでに上記「防衛装備品移転三原則」自体の見直しに向けた与党協議も進められている。

殺傷武器輸出、解禁を議論 自民、公明が非公開の場で進める「平和主義」の分かれ道

「防衛産業」というものは、米国の「軍産複合体」を見れば分かるように、一旦その業態が出来てしまえば、多くの関連企業が生まれ、常に「世界のどこかで戦争が起こっていないと、産業や雇用が維持できない」状態になってしまう、という大きな問題を抱えている。製造した製品(武器)は自国だけで市場が不足ならば、他国に輸出することになる。

武器を他国に輸出することで儲ける「死の商人」国家に日本がなることが良い、と思う人は誰もいない、と信じたい。社民党は防衛産業強化法案の廃案に向けてたたかっていく。

(2023年5月19日)